記憶

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蜘蛛女のキス 2017.06.08

大倉さんがやるって3/28に発表された。蜘蛛女のキス。一応、知ってた。

 

ミュージカルもあるから。それ自体は観たことないけど、ミュージカルのコンサートとかでよくタイトル曲歌うの。(よかったら見て https://youtu.be/IKEgEf-xBh4

 

エストエンドでは人気なのかな。日本では過去3回ミュージカル版はやってます。直近は2010年、ヴァレンティンは浦井健治さん。関ジャムに出てたよ!育三郎さんと井上さんと一緒に!

 

あと原作ザッと読んでから行きました。

 

 

 

 

感想

 

 

2ベルが鳴って、しばらくして客席が落ち着いてから暗転。どんな感じで始まるんだろう、ワクワク。
暗転したそのまま、いっけいさんの声、つまりいっけいさん演じるモリーナの声が聞こえた。モリーナは映画の話をしている。そこにちゃちゃを入れたりしているのは大倉さんつまりヴァレンティンの声。

 

ずっと真っ暗。耳だけ。映画の話が入ってくる。

 

監獄の天井には格子のついた窓があって、消灯後、そこからもれる月明かりだけを彼らは浴びている。もし天気が悪かったら、月が雲に隠れたら、彼らは暗闇に包まれる。

 

そしてだんだんと照明が当たって明るくなっていく。本当にゆっくり。

突然暗闇に放り込まれた時、だんだん目が暗闇に慣れて周りが見えるようになっていく感じみたいにゆっくり。わたしたちも彼らと同じ監獄に入れられたんだ、そんな感覚になった。

 

始まって30秒でもう演出に圧倒された。これって裕美さんの考案なの?こんなワクワクする始まり方ある!?!?素敵すぎます。好きです。

 

 

モリーナは映画の話を熱心に話すんだけど、ヴァレンティンは興味ないのよ、彼は現実見てるから。

 

 

待って、わたし大倉さんの舞台での演技、もしかしたら苦手かもしれない( ;  ; )とか思った。まあ後々分かるんだけど、そんなことなかった。(勘違いでした許してください。)わたしが嫌いなのは大倉さんじゃなくて大倉さんが演じてる癇癪持ちのヴァレンティンだった。なんかとにかく荒々しくて特に序盤はヴァレンティンかずっとイライラしてたから。

原作こんなに怒鳴ってなかったような気がしたからかも(まあ字面だもんね)

 

 

モリーナがするのは黒豹女の映画の話。原作では、ドイツ将校とフランス人のショーガールの恋の映画の話とか、他にもたくさんモリーナは映画の話をするんだけど、詰め込みすぎたら訳わかんなくなるから黒豹女だけにしたんだと思う。

 

でも黒豹女もショーガールモリーナそのものなんだよね。これ面白い。自分が普通ではないと思ってしまっているからなかなか積極的になれないし、敵を愛してしまったからスパイ行為みたいなことは出来なくて、結局彼のために生きることにする。

 

 

 

オートミールのシーン。

オートミールが入った2つのお皿をヴァレンティンが受け取るんだけど、すごい量に差があって、またヴァレンティンが癇癪を起こす。ドアをドンドン叩いて怒る。なだめるモリーナ。

 

そしたらモリーナがオートミール好きなの、ヴァレンティンが覚えてて、多い方をモリーナにやるのね、モリーナお腹空いてないから少ない方でいいっていうのに。

 

 

ここらへんからヴァレンティン好きになるよね。「太りたくないのか?笑」とか茶化しながらも、相手の好きな食べ物覚えてて食べさせてあげたいという気持ちが見えるの。す、、、好きィ、、、。

 

 

で、次の日、モリーナがお腹壊すの。

「俺も同じの食べたけど大丈夫だったぞ!?」「胃腸じゃないのか?」ってヴァレンティン言って。(ここ笑ってる人いたけど、、、このセリフ言ってるのはヴァレンティンだから。)モリーナ神経から来るものだから問題ないのよって。

でも痛くて痛くて、ヴァレンティンが監房の外の人を呼ぼうとするんだけど、いい!いい!大丈夫!って頑なに断るのね。

 

ヴァレンティンが映画の話をすれば気が紛れるから話してって。あなたのためじゃないのよ!自分のためにやるの。って主張しながら映画の続きをして。笑

 

で、熱心に話聞いてくれるの。ね、ヴァレンティン優しいよね、ね?優しいよね?好きじゃん。わたしもうここでヴァレンティン好きになってます。ハイ好きです。

 

 

いつかな、ヴァレンティンがお腹壊すの。下痢的な。ベッドでめっちゃのたうちまわってて、痛そう。モリーナがトイレ行きなよって言っても看守になんか言ったらダメだ!俺たちみたいな政治犯が投薬されたら終わりだ!みたいなことを言うヴァレンティン。

気を紛らわせるために、モリーナが映画の続きを話してくれる。(原作では新しいカーレーサーとフランスの女優の映画の話。舞台では、いや昨日の続きを話してくれって黒豹女の途中から話してた。)

 

で、話の途中で、そのままベッドの上で大きい方をしてしまって。モリーナ、嫌がらずにシーツ汚れる前に早く片付けちゃいましょっ自分の着てたシャツで拭いてって差し出して、臭い臭いって言いながらもパンツ(幸いにもシーツには染み込まずパンツで止まってたらしいw)の処理までしてくれて、優しさでしかない。母性すら感じる。

 

それに対して「ありがとう、、」って情けなく謝るヴァレンティン。今まで大声で癇癪起こしたりしてた人が初めてすごく小さく見えた。とても人間らしい。ヴァレンティンが初めて可愛く見えた。

 

 

でもこれは、実は仕掛けられたことで。

モリーナ実は革命家ヴァレンティンの仲間の情報とかを聞き出すために彼と同じ監獄に入れられたの。オートミールも本当は多い方をヴァレンティンにあげてお腹壊させるつもりだったんだろうけど、 ヴァレンティンが優しさ発揮しちゃったからモリーナがお腹壊す羽目になっちゃったんだけど。

 

モリーナが大好きなのは彼女のお母さん。今まででモリーナを愛してくれたのもモリーナだけ。お母さんは今病気なんだって。だから面会も本当は難しい。モリーナがお母さんからの差し入れ!ってってヴァレンティンと二人で食べてるのは、面会っていう嘘をついて当局からもらったもの。

 

 

次の面会の時に、モリーナは当局にまた差し入れのお願いをするんだけど、全部お腹に良さそうなものを頼んでくれるのね。もう裏切らないところまで来てしまったよモリーナ。

 

 

 

 

ヴァレンティンの「抱きしめてキスしたい子(マルタ)」宛ての手紙をモリーナが代筆してあげるシーン。

モリーナはヴァレンティンを愛してしまっているのに、他の人への愛の言葉を自分の耳で聞いてそれを文字に書き起こして。つらいなあ。健気だなあ。

 

ヴァレンティンはヴァレンティンで彼女を思い出して、ポツポツと呟くように彼女への思いを落とした。言葉の中には彼女の身体の感触を思い出すような発言もあった。彼女だもん。そうだよねえ。恋しいよね。

 

「俺はひとりぼっち」「この手紙を読んでる限り俺のことを考えてくれているんだと考えると嬉しいよ」みたいなことをヴァレンティンが言ってて、、、、

目の前にはずっとヴァレンティンのこと考えてくれてる人がいるんだけどね、、、、

 

 

結局ヴァレンティンはモリーナが書き終えてくれた手紙を破ってしまう。ヴァレンティンの自己満足だったのかもしれないけど、自分の思いを文字にしないとしんどかったのかな。頭の中整理しないと。

 

 

 

そう、ここでひとりぼっちって言ってたけど、どっかのシーンでモリーナに「一人で世界を変えられると思ってるの?」って言われて「俺は一人じゃない!!」ってキレるの、どっちが本当の彼なのかな。本当は寂しくて寂しくてたまらないんだね、、、、。

 

 

 

 

モリーナが、冷たいシャワーなんて浴びたら病気になっちゃうからって背中拭いてくれた時に、ヴァレンティンがフフッて笑うから、何がおかしいのよってモリーナが聞いたら、ヴァレンティン「もう背中が痒くないからだよ」って( ;  ; )( ;  ; )( ;  ; )( ;  ; )( ;  ; )( ;  ; )( ;  ; )( ;  ; )

 

その背中は拷問されて傷だらけになっていて、牢獄でろくに消毒もされずにシャワーも浴びれずにおそらくただれてひどいことになっていただろう。もしかしたらただのお湯で拭いたところでその傷はどうにもならないかもしれないんだけど、モリーナの優しさにフフッて喜んだのかな、人の優しさをヴァレンティンが感じたのかなとか思って、それを思い出してる今も涙が出ています。

こんなブタ箱の中で、人として生きているよ、二人とも。

 

 

 

 

フルーツケーキと紅茶でお茶しましょってなって、よく分からないけどヴァレンティンがブチギレてフルーツケーキと紅茶ののったテーブル(椅子だけど)ひっくり返しちゃうの。

 

その後すぐ反省して、謝るのね。すぐカッとなって自分の自制心が効かなくなっちゃうこと分かってるから。

でもすぐにモリーナは面会だと看守に呼ばれて、外に出る。

 

 

 

外に出て、面会じゃなくて所長と打ち合わせ。できるだけヴァレンティンのこと話さないし聞き出せてないことにしてる。

あんな癇癪起こされても、ヴァレンティンのこと守ってくれるの。

 

 

その間にヴァレンティンは自分がぶん投げた椅子とコップを直して、フルーツケーキは拾ってゆっくりゴミ箱に捨ててた。

こんな環境だから情緒が安定しないんだな。二人とも怒ってる時あるし、こっちもつらいよ。

 

 

 

モリーナ戻ってきたら、差し入れ(これも以前と同じく所長に頼んだやつ)の中身見せて、好きに食べていいわよって投げやり。前まではヴァレンティンが怒ってもなだめてたんだけどね。

 

ヴァレンティンは恥ずかしくてもう一回朝の話をするんだけど、そのお詫びというかそんな感じで、サンドウィッチ作ってあげて(パンにバター塗ってハムはさむにだ)可愛かった。

 

 

それでちょっと仲直りして(単純)、ヴァレンティンはモリーナの周りの人の話を聞く。モリーナの周りにはゲイばかりで、そういう人たちは自分が一番大事、みたいな。モリーナは男の人との信頼の置ける関係を築きたいけど、男の人が好きなのは女だからって。

 

モリーナが「ゲイ同士で愛し合う人もいるけどわたしは違うわ、だってわたしは女だもの、男の人と寝るの」って堂々とヴァレンティンに話すの、めっちゃかっこよくて、女としての誇り持ってて本当にかっこよくてモリーナ好きです。

 

 

 

モリーナが辛くなってベッドに篭ってしまって、ヴァレンティンが背中さすってくれてそのままそのような雰囲気になって二人は体の関係を持つ。

ヴァレンティンのほくろを愛おしく触、、、、、ここわたしの席上手の端っこだったからほくろ触ってるところ見れなかったんですけどどんな感じでした!?!?!?

モリーナのベッドがほぼ見えない位置だったから、セックスシーンが足元しか見えなくて、二人の関係が変わるところがわたしの聴覚に全て委ねられた。ヴァレンティンは声出してたけどモリーナは声出てなくて、自分が声出して気持ち悪いとか思われたくないのかななどと思った。

 

 

終わった後、二人ともありがとうって言ってて、モリーナの「ありがとう」は女のありがとう、抱いてくれてありがとうというかそんな感じなんだけど、ヴァレンティンのありがとうはなんかなぁ、なんなんだろうか。どんな気持ちかな。

 

 

 

 

翌朝、モリーナは女だった。ルンルンで可愛かった、、、そうだよねえ好きな人と繋がれたんだもんねえ、、、

でもヴァレンティンはそのセックスについて考察?し始めて、いや賢者タイムかよ、、、、、、ってなった。いやそういうとこだよ、ヴァレンティンさん、、、、、

 

モリーナもお願いだから今日だけは何の議論もしないでって言ってた。そりゃそうだわ。自分は幸せなのにそんなことされたら、ねえ。

というか、え、そんな男いる?昨日のセックスは〜、みたいな、冷静に話し出すの、めっちゃ嫌じゃない?何がしたいんだヴァレンティン。

 

まあその後は昔のお人形遊びのお話とかしてて、また仲良しでした。

 

 

 

 

モリーナが仮釈放するってなった。まあ本当は違うんだろうけど、最後までヴァレンティンは知らない。この牢獄からモリーナが出られるとなったら、ヴァレンティンは彼の仲間に伝言をモリーナに託そうとするんだけど、モリーナは頑なに描きたがらない。だって口を割りたくないから。きっと拷問されてもヴァレンティンのこと絶対にモリーナは話さないと思うんだけど、割る口を作らないというか、絶対に話さない裏切りたくないと思ってるから、だろうな。

 

 

モリーナは黒豹女の最後のところを話す。あ〜、終わっちゃうなあ。映画の話もこの舞台も。

 

 

 

最後に、キスしてないわね、その先のことはしたのに、となって、二人はキスをした。ヴァレンティンは、モリーナに尊厳を無くしてはいけない、自分を大事に生きるんだ、と伝える。優しいね。

その優しさからか、モリーナは組織に連絡を取ることを決める。

そしたらヴァレンティンはめっちゃ喜んで、抱きしめてからさっきのキスとは違う、もっと情熱的なキスをする。

 

わたし的に、結局ヴァレンティンが持つモリーナへの気持ちは信頼であって、愛ではないのかなとか思った。ヴァレンティンにインタビューしたいよ、どんな気持ちでモリーナに接してたのか。

 

 

 

 

出て行くってなって、時が止まる。

その後、モリーナが監獄を出た後、二人がどうなったか、それぞれが読み聞かせみたいに教えあう、最後のシーン。
モリーナのその後のことはヴァレンティンが語って、モリーナが聞き手になる。

モリーナは最後死んだってことをヴァレンティンが語った時のモリーナの表情がとても幸せそうだった。ヴァレンティンのために死ねて本望って感じで、愛を感じた。号泣。でもモリーナが語るヴァレンティンは最後まで彼女マルタのことを最後まで考えていて辛かった。ヴァレンティンは顔をキラキラさせてマルタとのその後(これはきっと夢なんだけど)の話を聞いていて、幸せそうだった。

 

 

この演出、とても好きです。たぶんそのままだったら辛い終わり方なんだけど、この演出は、辛いところもあるけれど、一方でハッピーにも感じさせる。

それが大倉くんがWS言ってたハッピーエンドなのかなあと思った。悲劇には変わりないから、悩みながら出した言葉だと思うけど、ある意味あってるのかもしれないね。

 

 

 

 

 

夢は覚め、モリーナが出て行くシーンに戻る。モリーナは堂々としていた。自分のその後のことは知ってるのだろうか、知らないのだろうか。

 

ヴァレンティンはモリーナを無言で見送る。

 

監獄のドアがバタンと大きな音を立てて閉まる。

 

 

 

 

とても良い舞台でした。
大倉くんが舞台嫌いにならなくてよかった。
わたしの好きな素敵な演出家の鈴木裕美さんと、たくさん場数踏んでるベテラン渡辺いっけいさんとタッグ組んで、舞台を好きになってくれてよかった。

 

もしまた何かの機会があれば、大倉くん、楽しみにしています。

 

 

 

コンデンスミルクのついたスプーンをニコニコしながら舐めるヴァレンティンが可愛くて可愛くて好きです。